ロアルド・ダール『キス・キス』の読書録
《ロアルド・ダール(著)、開高健(訳)(1974)『キス・キス』早川書房(異色作家短篇集1 改訂版)》の読書録です。
イギリスの小説家、ロアルド・ダールによる短編集。収録作品は下記の通り。
# | 日本語題 | 原題(英語) |
---|---|---|
1 | 女主人 | The Landlady |
2 | ウィリアムとメアリイ | William and Mary |
3 | 天国への登り道 | The Way Up to Heaven |
4 | 牧師のたのしみ | Parson's Pleasure |
5 | ビクスビイ夫人と大佐のコート | Mrs. Bixby and the Colonel's Coat |
6 | ローヤル・ジェリイ | Royal Jelly |
7 | ジョージイ・ポーギイ | Georgy Porgy |
8 | 誕生と破局 | Genesis and Catastrophe: A True Story |
9 | 暴君エドワード | Edward the Conqueror |
10 | 豚 | Pig |
11 | ほしぶどう作戦 | The Champion of the World |
いずれの作品も、童話・寓話的な素朴さとプロット備えながら丁寧に構成されている。ただし、単純な因果応報譚のようなものではなく、描写は説得力を持たせるために適切に与えられ、後悔やゾッとする感覚をそれぞれもたらしている。
一般的な童話や寓話が二次元とすると、この作品群は三次元の立体に拡張されており、童話や寓話に見られる残酷性を増幅し、その帰結に向けてプロットが組まれているという印象を受ける。
うち「ジョージイ・ポーギイ」「豚」はナンセンスな話になっていて面白い。他の作品と同じ心持で読んでいると最後には狐につままれた気分になる。
特に「豚」は前半からは全く想像だにしない結末を迎える。主人公の出自と豚という単語が示唆的である、と捉えることもできるが、素直に読んで唖然とするのが妙味だと思う。